【FMISラジオ掲載】
よっしーの法律相談所
~相続③~

2025年6月24日
相続について③
前回は、遺産を実際に分け合うときに、寄与分があれば多くもらえるということについて話しました。今回は、その逆で、もらえる遺産が少なくなる「特別受益」の話をしたいと思います。
亡くなった方から、生前に、援助を受けていた相続人がいる場合、すでに遺産をもらっているとして、取り分を少なくする、という制度です。
お金をもらっている子 供とそうでない子供との公平を図るということ趣旨があります。
よくあるのは、子供が家を買うときに親が援助をしていたというケースです。
基本的には、教育費は親の子供に対する扶養の範囲といえるので、特別受益には当たらないとされています。ただ、医学部とかは入学金や授業料が特別に高いので、そういう場合には考慮されることもあります。
金額によるのは、死亡保険金の場合もそうです。例えば、親が子供のうち1人を保険金の受取人にしている場合、それが特別受益にあたるか問題になります。
1人だけ保険金を多くもらえるとなると、不公平に感じるかもしれません。しかし保険金というのは、遺産ではないですよね。保険会社から支払いを受けるものなので、基本的には特別受益には当たりません。
ただ、遺産がほとんどないのに保険金だけが多額であった場合には、不公平になるので、修正するこ とがあります。
遺産の総額と生命保険金の金額の比率によっても変わります。
特別受益となった場合には、必ず取り分が減らされるわけではありません。亡くなった方の気持ちによっては、援助したお金と遺産は別もので、相続のときに考慮しなくてよいと考えていることもあります。
最初の例でいえば、家を買う時のお金は特別にその子に援助したもので、遺産を前もって渡したわけではないよ、ということです。
これを「持戻免除」といいます。本人の意思を尊重するという趣旨です。
この意思は何かに残しておかなければならないものではなく、むしろ、特別受益のことを考えて、「持ち戻し免除」の意思表示を紙に書く人はほとんどいないのではないでしょうか。
持戻免除の意思表示は、明確に残して なくても、本人の気持ちからすれば免除するつもりだったよね、ということがわかればよいとされています。これを法律用語では、黙って示すと書いて、黙示の意思表示といいます。
例えば、農家を営んでいる家が、家業を引き継いでくれる子供に対して農地を贈与したという場合だったり、親との同居のために二世帯住宅を建てるお金を援助したというような場合とかは、黙示の意思表示が認められることもあります。
あとは、結婚生活が20年以上の夫婦が、住んでいる家を他方に贈与した場合、この免除の意思表示が推定されます。例えば、おじいちゃんがおばあちゃんに、住んでいる家の名義を変えておいてあげるという場合などですね。
残されるおばあちゃんの老後の生活保障という意味合いで認められた制度です。
ちなみに、この結婚20年というのは、贈与税の特例制度と同じですので、終活の一環として、このような贈与をしておくことも1つの手だと思います。
以上で相続のお話は終わりになります。